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無題(テニプリ・忍足)


その瞬間 本当に時が止まったかのような錯覚を起こしたのは自分だけではなかったのではないか

いままでに見たことのない執着を見せた跡部の
(あの手塚との頂上決戦においてですら見せなかった勝つことへの執着)
まさに燃え尽きた といった体で気絶し立ち尽くした姿を見たとき

ああ この時間は終わったのだ

素直にそう思えた たとえそれが望まぬ結果であろうとも
誰にでも何にでも終わりはある それがいつかはわからない
しかし必ずそれはやってくる たとえ永遠に続くと思われる試合でも

その艶やかで しかし惨めな姿に喝采を送ろう
鳴り止まぬ拍手を


いや
鳴り止まぬ喝采など 無いのだ


そしていま またはじまる ここから

己の中の葛藤から這い上がり起ち上がり また同じことだと謗られても
何度でもはじめよう

俺達だけの時間を

by kanan-m | 2006-03-20 21:24 | ◆妄想駄文

無題(テニプリ・忍足)


「どうやっても届かへんのやろうな・・・」

自嘲気味に吐いた言葉に自分でかなり驚いてしまったのは迂闊というほかはない。さりとて気付かずにいられるほど馬鹿でもないし気付かない振りをするほど出来た人間でもない自分をよく知っているのでもう逃げ道はないも同然だ。いつも跡部の後姿を追っていることに気付いていながらそれこそ気付かない振りをしていた、これは罰だ。跡部の強さというのは多分非常な脆さも持ち合わせていて、しかしそれを一切出さない事によって己を御している、というところがある。そこに気付いてしまったとき、自分の中の感情を自覚したのだ。自分などついていなくとも跡部は大丈夫だ思うのだが、自分だけはいつも気付いているのだ、それを見ているのだ、という驕りはどうやっても消えない。それさえも彼には余計な事なのだ多分。全てを切り捨てる強い意志と眼は非常にストイックではあるが、弱い部分へ差し伸べる手も無駄になるのがわかりきっている事も忍足を更に滅入らせた。

忍足は深い溜息をつき、先ほど跡部と別れたばかりの道を振り返りさらにもう一度溜息をついた。

by kanan-m | 2006-03-09 23:58 | ◆妄想駄文

無題(『アカギ』仰木)


彼への欲情を覚えるのは至極簡単なことで、例えばあの皮肉めいた厭世観の漂う薄い笑みや打牌のときのしなやかで強い指先、そして意思のある鋭い視線、それらを眺めるだけで十分事足りた。普段雑踏にまぎれるとその存在を空気か霧のように隠してしまうこの青年は、ひとたび自分の舞台にあがると他の人間はレゴブロックのように見えるのに彼だけはひとり輪郭が縁取られているかのようにくっきりと浮かび上がってくる。それは自分が彼を特別視しているから、というだけでなく、何よりも彼の一挙手一動作が鋭く鮮烈でありながら優雅だからだ。窮地に追い込まれても全く揺るがないその視線と背中。まだ何日もこの青年を見ていたわけではないのにもう長いこと渇望していたような錯覚に陥りそうになって、ああこれ以上見ては駄目だ、と頭の後ろがわで警鐘がなる。しかしそんななけなしの理性など全く役に立たないことは十分に理解できた。はやくこの緊迫した泥試合が終了し幻想の館から否応なく現実に引き戻されることを祈るだけだが、そう易々とその希望が叶わないことは目の前の青年と老人が証明してくれる。

by kanan-m | 2006-03-09 23:57 | ◆妄想駄文