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無題(テニプリ・忍足)


「どうやっても届かへんのやろうな・・・」

自嘲気味に吐いた言葉に自分でかなり驚いてしまったのは迂闊というほかはない。さりとて気付かずにいられるほど馬鹿でもないし気付かない振りをするほど出来た人間でもない自分をよく知っているのでもう逃げ道はないも同然だ。いつも跡部の後姿を追っていることに気付いていながらそれこそ気付かない振りをしていた、これは罰だ。跡部の強さというのは多分非常な脆さも持ち合わせていて、しかしそれを一切出さない事によって己を御している、というところがある。そこに気付いてしまったとき、自分の中の感情を自覚したのだ。自分などついていなくとも跡部は大丈夫だ思うのだが、自分だけはいつも気付いているのだ、それを見ているのだ、という驕りはどうやっても消えない。それさえも彼には余計な事なのだ多分。全てを切り捨てる強い意志と眼は非常にストイックではあるが、弱い部分へ差し伸べる手も無駄になるのがわかりきっている事も忍足を更に滅入らせた。

忍足は深い溜息をつき、先ほど跡部と別れたばかりの道を振り返りさらにもう一度溜息をついた。

by kanan-m | 2006-03-09 23:58 | ◆妄想駄文

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